2009年10月1日木曜日

本書について






『ヨーロッパのデモクラシー』
網谷龍介・伊藤武・成廣孝編、ナカニシヤ出版、2009年5月刊


〔A5判、ソフトカバー、466頁、定価3200円(税別)〕
ISBN978-4-7795-0336-8

 このたび標記のようなヨーロッパ政治の入門テキストを刊行する運びとなりました。
 現在のヨーロッパ政治は、先進国共通のトレンドとヨーロッパ固有の要因の中で、大きな変容の中にあります。ヨーロッパ統合の進展はその一例ですが、各国政治の変容はそれにとどまるものではありません。このようなヨーロッパ政治の動向は、現在のデモクラシーの状況・困難を様々な形で表現するものであり、その十分な理解は、日本の読者が政治をめぐる問題を考える上でも有益なはずです。
 しかし現状では、大学生・一般社会人がヨーロッパ政治についての基本的な理解を得ようとしたとき、必要な情報源がまとまったかたちで存在しているとはいえません。類書はございますが、アップデートが行われていなかったり、専門的で難解であったりと、かならずしも適切な状況にはありません。本書は、そのような欠落を埋めようとするものです。
 本書の書名は、ご覧になればお分かりの通り、トクヴィルの名著『アメリカのデモクラシー』に範を求め、ヨーロッパのデモクラシーの特徴をみなさんに分かり易く伝えたい、という願いから付けられました。その特徴として、とりわけ「組織政党を軸としたデモクラシー」という視点を強調したのも、編者の研究・講義経験を踏まえて、政党政治を軸とした解説が、もっとも現代ヨーロッパ政治の特質を表し、かつ学生の関心を引き付けられるという意図からでございます。それを伝えるために、読みやすく平易で手厚い解説、専門用語を多用しない説明、各国別解説と比較のバランス、コラムの積極的採用など、手法としても工夫に努めました。
 みなさまお忙しい時期かと存じますが、是非ご検討の上、教科書・参考書などの候補としてご検討いただければ幸いに存じます。
           編者一同(網谷龍介・伊藤武・成廣孝)/編集担当(酒井敏行)